読めないあなたに小説を。




言われるがままに目を閉じる。
でも、なかなか眠れない。


隣に恵弥くんがいるからなのか、
バスが揺れているからなのか。


ふぅ、と息をつくと、ふいに頭に手が伸びてきて、
恵弥くんの手が私の頭に触れた。


そのまま頭を恵弥くん側に引き寄せられて、
恵弥くんの肩に私の頭が乗った。
これは、どういう……。


「寄り掛かってええから、力抜け」


「は、はい」


思わず敬語で返事をして、ゆっくり目を閉じる。
恵弥くんの肩は気持ちよくて、それになんだか、
シトラスのいい香りがする。


ふわふわした気持ち。
あの保健室で見た夢のような感覚に陥って、
途端に落ち着いてきた。


あっ、寝ちゃうかも……。
でも、ここで寝たら勿体ない。
恵弥くんと話が出来るいいチャンスかもしれないから。


「ねぇ」


「あ?」


「ごめんね。リーダー、任せちゃって」


素直な気持ちを伝える。
すっと楽にその言葉が出て、ようやく言えたと安心する。


これを言わなくちゃ、私はずっと
モヤモヤしたままだったと思うから。


「別に。早く終わりゃあええなと思って
 立候補しただけや」


「そうなの?でも、私を助けてくれたでしょ?」


「助けたつもりはないねん。たまたまやろ」


「そっか。それでも、ありがとう」


「ええから、寝ろよ」


きっと、恵弥くんは今、顔を真っ赤にさせているのだろう。
声だけで分かる。


照れると少し早口になるの。
それが面白くて笑ってしまう。


「何笑っとん」


「ごめん。恵弥くんの癖を見つけちゃって、
 かわいいなぁって」


「あ?」


恵弥くんがこうして照れることって、
みんなの前でよくあるのかな?


でも、この癖は私にしか分からないんじゃないかなと思う。
なんだかそれが特別のようで、嬉しかった。


「寝ないんか?」


「寝るの勿体なくて」


「んな、少し話してもええか」


「うん」