恵弥くんを見つめていると、恵弥くんの瞳が私を捉え、
それから冷たい声が降ってきた。
「嫌なら嫌ってはっきり言いや。
人に甘えて自分の意見も言わんのは卑怯やねんで」
「あっ……ごめん、なさい……」
慌てて謝ったけれど、
聞こえていたのか分からない。
そのくらい、消え入りそうな声だったと思う。
私のせいで、恵弥くんがリーダーをやることになってしまった。
もしかしたら、恵弥くんは私を助けてくれたの?
私がリーダーをやらなくて済むように、
自分から名乗りをあげてくれたの?
そうだとしたら私は、お礼を言ったほうがいいんじゃないの?
ああ、お礼よりも、「ごめん」しか出てこない。
「まあまあ、紫月さんもごめんね。断りにくかったでしょ」
「そ、そんなことないよ」
「ちょっと恵弥、紫月さんに冷たくない?優しくしなよ」
2人が私のフォローをしてくれる。
なんとなく雰囲気が柔らかくなったような気がした。
なんで?
恵弥くんは言いたい放題言ったのに、
誰も文句を言わない。
それどころか、空気が和んでしまった。
これは一体どういうこと?
どうして彼は嫌われないの?
2人と楽し気に話している恵弥くんを見つめる。
彼はもう、私に言った一言も頭の中から消えているんだろう。
もう誰も、私を視界に映してはいない。
心が軽くなったはずなのに、モヤモヤしていた。
どうして、私のようにならないの?
彼は何か、マジックでも使っているんじゃないかって思う。
嫌われない何かが、恵弥くんにはあるのだ。
ずるい。ずるいよ。
私はどうしてそれが出来ないの?
恵弥くんはいい人だけれど……なんか……。


