読めないあなたに小説を。




「別に……。思ってないもん」


「無理して話しかけんな。
 共通の話題もないねんから」


ポケットに手を突っ込んでぼうっと前を見る恵弥くん。
共通の話題がない?あるじゃない、ちゃんと。


「あのタンポポなんだけど」


私が声を上げると、恵弥くんは弾かれたようにこちらを見て、
顔を真っ赤にさせた。


「おい、こんなとこでそんなこと言わんでええがな」


「ご、ごめん」


耳まで赤くなった恵弥くんが私を睨みつけてすぐにそっぽを向く。
咄嗟に謝ったけれど、そんなにキツイ言い方しなくてもいいと思うのよね。


普通の話じゃない。
しかもいいことをしたんだから、誇るべき話よ。


「ねぇ、恵弥くん」


「ああ、うっさいわ。話しかけんな言うとるやろ」


「でも……」


「最悪や。お前の隣なんて」


沸々と怒りが込み上げてきた。


そんなこと言う?
思っていたとしても、言っちゃいけないと思うのだけれど。


「き、昨日は優しくしてくれたのに。
 どうしてそう冷たいの?」


「あ?」


「そんなに嫌いなら、どうして昨日は助けたりしたのよ」


興奮してそう言い放つと、
恵弥くんはちらりとこちらを見たけれど、
またそっぽを向いてしまった。


スマホを取り出して操作しながら、頬杖をついている。


何も喋ってくれないと諦めて窓の外を見た。


グラウンドでどこかのクラスがボール投げをしている。
そう言えば、このクラスもスポーツテストをするんだろうな。


嫌だなぁ、運動音痴だし。





「お前が、助けてって顔しとったから」


「えっ?」