読めないあなたに小説を。




「引いたら、黒板に名前な」


黒板を見上げて、15番を探す。
見つけて思わず心の中でガッツポーズをした。


私の席は窓際の一番後ろだった。


これでしばらくは落ち着いた生活が約束された。
あとは隣に誰が来るかだけ。


こうなったらもう、この際誰が隣でも構わない。
私って、運がいいのね!


女の子たちが次々クジを引いて黒板を埋める。


全員引き終わり、次に男子の順番が来て、
次第に女の子たちがキャーキャー騒ぎ始めた。


隣に来た男子が不服で泣き出す子。
仲良い男子が来て手を合わせる子。
当たり障りのない男子が隣でほっとする子。


みんな結果はどうであれ楽しそう。
この感じはくすぐったいけれど、嫌いではない。


窓の外を眺めていると、隣に誰かが来た。
私の隣は誰だろうと、少しドキドキしてそちらに目を向けた。


「あっ……」


視界が赤い。


黒板に目を向けて確認すると、
男の子にしては綺麗な字で、
「須藤恵弥」と書かれていた。


もう一度隣を見る。
彼は私を見ても何も言わず、座った。


「と、隣だね」


思い切って話しかける。
恵弥くんはちらりと私を見ると、
また視線を前に戻した。


「嫌な奴が隣に来て最悪、とか思っとんのやろ」


冷たい声。
その声に思わずムッとした。


昨日の優しさは何だったわけ?
やっぱりこれがデフォルトなのかな。