読めないあなたに小説を。




席替えなんて学校生活の醍醐味だもんね。
私も小学生の頃は席替えが楽しみだった。


仲の良い子と近くになったり、
私にはそんなの全然縁がないけど、
憧れのあの子と隣になったり。


期待が膨らむ最大のイベントだ。


誰が隣になるかによって、
学校生活の明暗が決まると言っても過言ではない。



なるべく話せる子がいいけれど、
隣は女子ではないし、そもそも仲の良い子なんて一人もいない。


どうしよう、憂鬱。
せめて後ろの席がいいな。


1限が始まり、先生がクジの入った箱を持ってくる。


黒板に席表を書いて、パンパンと手についた粉を落とすと、
先生は腕組みをした。


「女子から引くか。今日は4月8日だから、
 8番の奴から引いてくれ」


男子からブーイングが飛び交う。
この先生、やる気なさすぎだけど、
女子からってさりげなくレディーファーストにするあたり、
かなりのやり手かもしれない。


この普段のダメさ加減と、
こういう時のさりげない気遣いのギャップに
やられる女性もいると思う。


先生、結婚しているのかな。


「8番、紫月だな」


「えっ?」


そうか、忘れていた。
私の出席番号は8番だったのか。


慌てて立ち上がると、みんなの視線が突き刺さる。
前に出るように促されて、教卓に向かった。


クジ箱の前で止まると、恐る恐る箱に手を入れる。
ガサガサと紙が手に当たった。


どれにしようか迷っていても仕方ない。
時間をかけないように早く引かなくちゃ。


そう思ったので、手の中に入り込んできた1枚を掴んで引いた。


紙を広げると、15と書かれていた。