読めないあなたに小説を。




私は今まで、沢山の人からいろんな声をかけてもらった。


小説サイトにはファンが沢山いるし、
何を書いても「泣ける」とか「感動する」とか言われてきた。


それを、くだらないと思うの?


恵弥くんは私を知らないから、
私の小説を知らないからそんなことを言うんだ。


嫌悪感を隠しもしないで言いたい放題。


こんな人、大嫌い。


「じゃあ、ほっといて」


消え入るような声で言うと、
恵弥くんは消毒液をしまって絆創膏を貼り、
スタスタと扉まで歩いた。


そこで一度止まると、少しだけ振り向いて言った。


「言われんでも、そうするわ。ボケ」


ピシャンと扉が閉められる。
じわりと滲んだ涙を腕で拭って、スマホを取り出した。


昨日撮った、タンポポの写真。


やっぱりあれは恵弥くんがやったんじゃない。
だって彼はこんなに冷たいし、嫌な奴だ。
こんな純粋な心を持っているわけがないもん。


少しでも、もしかしたら本当に恵弥くんが?
と考えた私が馬鹿だった。


彼は、人の心を土足で踏み荒らし、
平気で人を傷つける最低な人間だ。


あんな人、大嫌い。


こんな感情が渦巻く今、小説を書く気になれなかったから、
小説をしまって机に突っ伏した。


もう、顔も見たくない。
でも同じクラスだから嫌でも顔を合わせてしまう。


どうしろっていうの?


私はまた、保健室登校を繰り返してしまうのだろうか。