読めないあなたに小説を。




嫌い、という言葉がぐさりと胸に突き刺さる。


人から嫌われるのが怖い。


今まで面と向かって嫌いと言われたことがなかった。
だから余計、悲しくなった。


心臓をぐっと鷲掴みにされているみたいに、きゅぅっと苦しくなる。
そんな私を気にもせず、恵弥くんは続けた。


「お前みたいに、そやって作り笑いで誤魔化して、
 誰にでもヘコへコする奴、いっちゃん嫌いやねん」


そう言って、恵弥くんはスタスタと歩いて行ってしまった。


ダラダラと汗が噴き出る。


気持ち悪くて、胃の中のものを全部吐き出してしまいそうだった。


彼の言葉がぐるぐる回る。
胸がざわざわして落ち着かない。
ダメだ、今日は、教室に入れそうにない。



階段を上がろうとして、足を引っ込めた。
そのまま逃げるように、一階の奥にある保健室へと向かった。


ああ、またここに戻ってきちゃうのか。
情けないな、私……。


「あら、朱莉ちゃん、どうしたの?」


保健室の松村先生がにっこりと笑いかけてくれた。
ほっと胸をなでおろして、ベッドへダイブする。
お日様の匂いがするシーツに顔をうずめていると、
気持ちが落ち着いていくのが分かった。


「ちょっと具合悪くて。ごめんなさい」


「謝ることないのよ。好きなだけいていいからね」


天使のような、神様のような言葉をくれる松村先生が、私は大好きだ。
ここだけは、私を害するものは何もない。
消毒の匂いと、優しい先生がいるだけだから。