「どうした?」
「どうもしてないよ」
「いや、絶対何かあったでしょ」
真っ白で無地の便箋に、そのピンク色の文字が鮮明に映し出されていた。
初めて見るものに何て反応したらいいか分からない。
見てしまってはいけないものを覗いてしまった。
とりあえず元通りに畳んでおこう。
辺りを見渡すとみんなは卒業証書と一緒に記念撮影をしている。
卒業式後の賑やかな下駄箱で、ここだけが別世界だった。
隣でゆっくりと息をはく音がして、はっとした。
これ、ラブレターじゃん。
だけど、宛先の主の下駄箱は空っぽ。
それは、彼が二度とここに来ないことを意味している。