「慶兄…っごめ」


「謝るなよ。ももはそのままでいい」



ごめんね。ごめんね……――



こんな私でゴメン……。



何度も何度も、心の中で慶兄に謝った。



こんなに想ってくれている人がそばに居るのに、何故逃げてしまうんだろう。


「ももの気持ちを承知で俺が付き合ってもらってんだ。だから謝るなよ」



さっき感じた、慶兄に気持ちが向かっているんじゃないかと思った感覚は、何だったんだろう。


場の雰囲気?ただの錯覚?




胸がズキズキと痛い。



私を包み込んでいる腕は、暖かくて優しくて、心地良いのに。



私は、まだ…―――。



「ももの気持ち、大切にしてやりたい。でも、たまには好きにさせてもらうぞ?」


「…なにそれぇ」



優しく耳元で囁く慶兄に、また胸がグッと詰まる。



慶兄は、どんな気持ち?


私は、ぐーって心臓が縮むみたいで苦しいよ。



震える私を、優しく何度も何度も撫でてくれて、ぐっと抱き締めてくれる。



時々、おでこにキスを落として、覗き込むようにして私を見つめると、ふわっと笑いかけてくれる。



慶兄の優しさに、涙が止まらない。