「慶…にっ……ごめっ、わたっ」


震える体を抑える事もできず、溢れ出る涙も止める事ができない。


驚いた視線を向ける慶兄に、必死に言葉を繋げようとするが、嗚咽でうまく声が出せない。



傷付けたくない…何か言わなきゃ。慶兄が悪いんじゃないって……。



「ゴメン…いきなり嫌だったよな」



痛みを堪えるような、悲しげな笑顔で私の涙を拭う慶兄に、必死で頭を横に振った。


「ちがっ、ゴメ…っね、違うからっ……慶にぃっ…が、悪いんじゃな…っ」


「…うん。分かったから」



何故だか分からないが、突然の恐怖に襲われた。

無性に怖くなってしまい、未だに震える体を抑える事なんてできなかった。


「ゴメ、ゴメンっ…」


「何でももが謝るんだよ…。ももは女の子だ。それに不安になったり怖くなったりする人だっている」



優しく諭すように、私の頭を撫でながら言う慶兄に更に涙が溢れ出る。



私は、迷っていたんだ。

このまま全てを忘れて、慶兄に身を委ねてしまおうと、私は逃げようとしたんだ。


最低な私に、慶兄は優しく頭を撫でてくれる。



迷っていた私は、結局いざとなると、次は慶兄から逃げ出してしまったんだ。


「俺ばっか気持ちを押し付けちまったなあ…ゴメンな」



頭を振る事しかできず、思わず両手で顔を覆った。


体の震えも、涙も、止まる事を知らない。


ジンジンと痛む額は、前にも増すように頭に痛みを響かせた。


「ゴメン…っ私が、悪いの」



そう言う私を、私の横へ転がった慶兄が、優しく包み込んだ。




「何も悪くない…。ここまで気を許してくれて、嬉しいよ」