「お、おはよ」
回らない口を、無理矢理開いて瑠衣斗に向かって挨拶をした。
来るまでに考えていた言葉は、一気に吹き飛んでしまって何も頭に浮かばない。
考えていたと言うよりも、考えても思い浮かばなかっただけだ。
「おま…お前昨日どこ居たんだよ」
ハッとしたように口を開いた瑠衣斗は、そう言いながら大股で私と慶兄に向かって歩いてくる。
沢山の着信やメールを、まだちゃんと確認していない。
美春達に謝りの電話を入れなきゃと、私は頭の片隅に置いていた。
「…さん…ぽ?」
散歩と答えた私に、慶兄が後ろで吹き出した。
私と慶兄の目の前にやって来た瑠衣斗は、呆れたように溜め息を漏らし、私を見下ろしている。
「ま、いいだろ。俺のももをいじめんなよ」
スッと私の横に並んだ慶兄は、私の肩を抱き寄せ、そう瑠衣斗に向かって口にした。
「………は??」
思わずすぐ俯いてしまった私は、瑠衣斗の表情が分からない。
いずれ分かる事だ。事実には変わりない。
そう理解しようと努力するのに、胸が締め付けられる思いだ。
この気持ちは、どんな私の感情なんだろう。
複雑すぎる感情に、私は口を固く閉じる事しかできなかった。

