いちご




「…大切にするね」



照れ臭くて、顔が緩んでしまう


力を入れても緩んじゃうよ…。


目を合わせて笑っていた慶兄が、何かに気付いたようにふと私の後ろに目線を移した。



何だろう…。と、躊躇する事もなく振り返った先に、私はすぐに後悔したような気持ちになってしまった。



「お前も今からか?」



慶兄の声が間近に聞こえるが、私は慶兄を見る事ができない。

振り返った先の人物に、胸が鷲掴みされたようにギュッとなり、血液が逆流しているんじゃないかと思う程手足の感覚がなくなった。



そこには、驚いた顔をした瑠衣斗が立って私と慶兄を見ていた。



声を掛けた慶兄に反応する事なく、ゆっくりと薄く瑠衣斗の唇が動き、私は何故か目頭が熱くなったような気がした。



――……もも。



瑠衣斗の唇は、私の名前を呟いたように見えた。