心に黒い雲が垂れ込むかのように、広がる胸の嫌な感覚に眉をしかめた。
昨日の“りな”さんと瑠衣斗のキスシーンは、しっかりと脳に焼き付いて離れない。
そして、彼女に言われた言葉によって、フラッシュバックするかのように鮮明に思い出す……。
あの8月の寒い雨の日からの数日間――――……。
数日間は無意識に生きてただけのような日々で、記憶がコマ送りだ。
思っていた以上に、私はショックだったんだ。
ショックで、数日間をどう生活していたのかさえ……覚えてない。
やっぱり、大事な何かを……忘れているような気がする。
「もも…顔色わりぃぞ?」
「え…?あ、だ…大丈夫!!」
心配そうに顔を覗き込む慶兄に向かって、胸の前であわあわと両手を振った。
私…顔に出てるんだ。
気を付けよう。
これ以上、人に心配を掛けたくない。迷惑を掛けたくなかった。

