遠ざかっていく足音を聞きながら、本当に今何時なんだろう?と思っていると、慶兄が私の横に立った。
思わず起き上がろうとした私に「大丈夫か?」と手を貸してくれた。
「ありがとう」
そう言うと、私の肩と背中を支えて起き上がらせてくれた。
支えていた手を離され、慶兄を見上げると、口元だけ穏やかに微笑んでいた。
「もも、誰かに頼りたい時は頼っていいんだぞ」
「慶兄…」
突然そう声を掛けられ、目が合った。目がそらせずにいると、慶兄の手が延びてきた。
そのまま頭を丁寧に撫でられる。
大きな手は、優しく私の頭を何度も撫でてくれている。
心地好い感触に、安心感が産まれた。
おもむろに、慶兄は目線を外さないまま、私の目の高さに合わせてかがんで、私の顔を覗き込んだ。
「本当は、このまま俺が慰めてやりたい所なんだけど」
真剣な顔でそう言われ、思わず目を見開いてしまった。

