京の都 陰陽師

やえこのことがあった、一週間後。
また、女が、晴明の屋敷のある、森の周りを歩き回ってた。
そして、珱姫の式神に、声をかけた。
「もし…、この辺りに、安倍 晴明様のお屋敷があると、お聞きしてきたのですが…。
どちらでしょうか?」
「あなた様は?
どなたにございます?」
「これは、失礼しました。
私は、さやこさまに使える、かやと言う者です。
先日、やえこさまの件をお聞きしまして、是非とも、我が女主人のさやこ様を、見ていただきたいのです。」
「少々、お待ちください。」
そう言うと、式神は消えた。
かやは、驚き、固まった。
式神は、珱姫に伝え、珱姫は、晴明に伝えた。
晴明は、「会おうか…。」と言った。
それを聞いて、式神は、かやの元に戻った。
「お待たせしました。」
侍女は、また、驚いて、固まった。
「あ…、あなた…何者…?!」
「わたしは、珱姫様の式神にございます。
晴明様と珱姫様が、お待ちです。晴明様と珱姫さまの所へ、ご案内致します。
どうぞ。」
式神は、森の周りを、少し歩いた所で、立ち止まった。
「ここが、入り口です。」
式神が、そう言うと、塞がれてた、木々が、避け、入り口が出てきた。
「これは…。」
「晴明様達は、人気がすごいので、出入り口が、分からないように、しているんです。」
「な…、なるほど…。」
「こちらが、晴明様のお屋敷にございます。
こちらへどうぞ。」
侍女は、晴明の前に来た。
「ここには、なんで来たんや?」
「どうか、我が、女主人のさやこ様に、お会いして頂けないでしょうか?」
「「会う。」言うても、何かがおかしいから、会って欲しいんやろ?
それは、何かを聞いてんねん。」
「やえこ様と同じような、症状なんです。
やえこ様から、お聞きし、参った次第にございます。」
「会うんはええけど、さやこ殿は、陰陽師について、どう考えてるんや?
やえこ殿と同じなんか?」
「…そうにございます…。」
「それやったら、行っても、同じなんやないん?」
「それでも、お会いしたんですよね?
お願いします!!
さやこ様にも、お会いして下さい!!」
珱姫は、晴明を見た。
晴明は、腕を組み、目を閉じ、考え込んでていた。
珱姫は、下を向いた。
侍女は、懇願した。
「分かった。
会う。
せやけど、やえこ様と一緒やったら、僕らは、手を引きます。
それでええですか?」
「はい…。
それでも構いません…。
お願いします!」
珱姫は、晴明の顔を、もう一度見たが、晴明は、無表情だった。
とりあえず、さやこ邸に行くことにした。
「ここが、さやこ様のお屋敷にございます。
どうぞ、お入り下さい。」
晴明と珱姫は、屋敷に入った。
「こちらが、さやこ様のお部屋にございます。」
さやこの部屋の前で、侍女が声をかけた。
「さやこ様、安倍 晴明様と珱姫様がいらっしゃいました。」
さやこは、返事をしなかった。
「さやこ様?」
部屋の向こうから、声がした。
「何用じゃ?
やえこと同じ用か?」
侍女は、どもりながら答えた。
「そうです…。」
「…帰ってもらえ!!」
「しかし…。
さやこ様のご様子、病とは、思えません。
どうかお目通りを!!」
「会わぬっ!!」
それを聞いた、晴明。
「僕らの出来る事はなさそですね…。
このまま、失礼します。」
侍女は、焦った。
「晴明様!
お願いにございます!!
さやこ様を…!!」
「これでは、話になりません。
失礼します。
珱姫、行くで!」
珱姫は、後ろ髪を引かれるような思いで、晴明について行った。
「晴明様…。」
「珱姫、今回は、珱姫にの願いは、聞かへん。」
「ですが…。」
「珱姫は、甘いっ!!
僕らは、慈善事業やないねん!!」
「そうですが…。」
珱姫は、黙って晴明について行った。
屋敷に帰っても、珱姫は、さやこの事を考えていた。
「まだ、考えてるん?」
「い…、いえ…。」
「嘘やろ。
ほんまは、考えてるんやろ?」
「…はい…。」
「考えても仕方ないやろ?
僕らの事、信じへん人は、信じへんねん。
そんあ人の事、考えても、何にもならへん。」
「そうですが…。」
「珱姫、優しすぎる。
そんなん、損するで?」
「分かっては、いるのですが…。
どうしても心配で…。
「あたしには、助ける事が、出来るのに…。」って、思いが強くて…。」
珱姫は、下を向いた。
晴明は、珱姫の肩を抱きしめた。
「珱姫、信じてもらって、除霊をするのが当たり前なんや。
信じてくれへん人は、救いようがないねん。
それは、分かってくれ。」
珱姫は、頷いた。
次の日の朝、さやこの侍女が来た。
だが、晴明が、「会わん!!」と、言ったので、入り口が、分からなかった。
侍女は、すごすごと帰って行った。
珱姫は、その姿を見て、心を痛めていた。
「(晴明様が正しい…、晴明様が正しい…、晴明が正しい…。)」
そう思いながら、夕飯の準備をしていたら、指を切ってしまった。
式神は、慌てて、布で処置した。
晴明も、慌てて来た。
「どうしたんや?!」
「ちょ…、ちょっと、考え事していて…。」
「さやこ殿のことか…?」
「…はい…。」
「…はぁ…。
しゃあないなぁ…。
明日、もう一回、行ってみようか…。」
「…晴明様!!
はいっ!!」
珱姫は、大喜び。
次の日、晴明は、約束通り、さやこの所に行った。
侍女は、驚いた。
「こ…、これは、晴明様!!」
「さやこ殿に会わせていただけますか?」
「分かりました。」
侍女は、さやこの所に、晴明達を通した。
「さやこ様、晴明様と珱姫様が来ました。
どうか、お目通りを…。」
部屋の中から声がした。
「会わぬ!!」
「さやこ様、一度でいので、お会いして下さい!!」
「…分かった。
一度だけぞ?」
「ありがとうございます!」
侍女は、喜び、晴明と珱姫を通した。
晴明は、さやこに何が起きてるのかを、説明した。
さやこは、思うとこがあったようで、晴明の言葉に、耳を傾けた。
そして、重い口を開いた。
「ひと月前のことじゃ。
みよと言う者が現れ、「夫の忠一様を返して!!」と、叫んだのじゃ。
忠一様とは、妾の元に通ってくれる、男のことじゃ。
妾は…、今…、どのような状態なのだ…。
はっきり申せ。
女子の霊がついておるのか?」
「はい。」
晴明は、女の様相を、さやこに伝えた。
「それは、間違いなく、みよじゃ。
妾は、どうすれば良いのじゃ?」
「みよ様の生き霊に、ご自分のお身体に戻って、いただきます。
その術式の準備に、入らせてもらって、ええですか?」
「頼もう。」
「分かりました。」
晴明と珱姫は、術式の準備に入った。
「珱姫。
今回は、ここで、やるで。」
「はい。」
「刀の準備は?」
「出来てます。」
「今回は、刀使う可能性が高からな。」
「はい。」
丑三つ時ー。
鬼になった、みよが現れた。
「これは…。
やっぱり、鬼になっていたか…。
珱姫。
刀!!」
「はい。」
晴明は、刀で、鬼になったみよを切った。
みよは、叫びながら、消えていった。
「これで、終わりました。
みよ殿は、これで、来なくなります。
さやこ殿の症状も、和らぐ事でしょう。」
晴明達は、謝礼をもらい、帰った。
後日、忠一から、「みよが亡くなった。」と聞かされた、さやこ。