次の日の昼、博雅は、晴明邸に向かった。
「晴明、良い魚が、手に入ったんだ。
一緒に食べよう。」
「それは良いな。
珱姫、七輪と酒を…。」
「はい。
すぐに、準備させます。」
珱姫の式神が、準備していると、そこに、右大臣の娘である、さとこが、お供を連れて来た。
「珱姫。
珱姫は居るか?」
「あたしにございます。」
「そなたが、珱姫…。
昨日は、遠くからだったので、分からなんだ。
我が名は、さとこ。
右大臣の娘だ。
珱姫、これらは、父からの贈り物じゃ。
受け取るが良い。」
「お受け取り出来ません。」
珱姫は、即答し、にこりと微笑んだが、目は笑ってなかった。
それを聞き、さとこは、怒った。
「そなたっっ!!
贈り物の中身も見ずに、返すと申すのか?!
この中には、きらびやかな物が、沢山、入ってると言うのに…!!」
「はい。
あたしには、必要の無い物ばかりですので。」
さとこは、益々、怒った。
「そなたっ!!
父の思いが、分からぬのか?!!」
「あたしは、安倍 晴明様の妻です。
晴明様以外の殿方に、興味ありませんので、他の殿方からのご好意は、何も感じません。」
珱姫は、再び、にこりと微笑んだが、目は笑ってなかった。
さとこは、激怒!
「父がここまで、贈り物をするのは、珍しいのよ?!!」
「それでも、あたしは、何も思いません。
さとこは、怒り心頭。
「そなた!!!
何が、不満だと言うのだ?!!」
「不満は、ありません。
ただ、晴明様のことしか、頭に無いだけです。」
珱姫は、またまた、にこりと微笑んだ。
だが、めは、ずっと、笑ってない…。
さとこは、唇を噛んだ。
「全ての贈り物を持って、お帰り下さいっ!!」
「持って帰れる訳ないでしょ?!!
そなたの侍女にでもあげるわ!!」
「その必要は、ありません。。
彼女達は、皆、式神なので。」
珱姫は、術を解いた。
ただの紙に変わっていく、式神達。
ひらひらと舞いながら、その場に落ちていくのを見て、珱姫は言った。
「ご覧お通りにございます。
術が解けて仕舞えば、ただの紙。
そのようなものに、必要はありません。」
さとこは、再び、唇を噛み、贈り物を持って、帰った。
それを見て、珱姫は、式神達を戻した。
贈り物を突き返された、右大臣は、その品々を、他の妻達に与え、さとこには、口止めをした。
妻達は、突然の贈り物に、大喜び。
次の日
右大臣の遣いが二人来た。
「珱姫殿、右大臣様がお呼びだ。
我らと、参られよ。」
「(今度は、お呼び出し?!)
(晴明様にしか、興味ないって、言ったのに…。)」
珱姫は、不服な顔をして、ついて行くことに…。
気が気がじゃない、晴明。
牛車に乗り、右大臣の所へ行った。
「右大臣様、珱姫殿が、参られました。」
右大臣は、思いっきり、障子戸を開けた。
「珱姫、よくぞ参られた!!!
さぁ、入るが良い!!」
珱姫は、渋々、中に入った。
「珱姫、贈り物は、全て、気に入らなかったようだな?」
「(気にいる気に入らないの以前の問題…。)
…はい。」
「では、お主の気にいる物を、与えよう。
何が良い?
何でも良いぞ?」
「あたしが、欲しいのは、晴明様のお心…。
ただ、それだけにございます。」
「何と!!
そこまでして、晴明が良いか?!
晴明のどこがいいのだ?!!
晴明、晴明言いよって…。」
「晴明様は、あたしの夫であり、あたしは妻です。
この身も心も、晴明様のものにございます。
(あなたの入る隙はないの!!)
(何度言ったら、分かるのよ?)」
「我が妻になれば、家事などせずに済むぞ?」
「全ての、家事を一人でしている訳では、ございません。
式神達に、手伝ってもらっております。
それに、晴明様の身の回りのお世話をするのが、あたしの喜びにございます。」
「お主は、きらびやかな着物を着たいと思わぬのか?」
「きらびやかな着物は、動きにくくございます。
(吹き飛ばされたりするのよ?)
(邪魔なだけじゃない!!)
陰陽術の際に、邪魔です。」
「我が妻になれば、陰陽師もせずとも良いぞ。」
「(は?)
陰陽術の使えない、あたしなど、ただの人形…。
陰陽師だからこそ、あたしなのです。」
「何を言う!
お主は、何もせずとも、美しい。」
「(ただ、着飾った、あたしを置きたいだけ?)
(話すだけ無駄ね。)
美しい女子は、右大臣様の周りに、沢山、いらっしゃるでは、ないですか。」
「どうしても、我が妻にならぬと申すか?」
「はい。
(当然でしょ?)」
「ならば、晴明の地位を脅(おびや)かすと申してもか?」
「(今度は、脅し?)
それでも、あたしは、右大臣様の妻には、なりません。
右大臣様、これだけは、申し上げておきます。
先日、ご子息が、何者かに、呪詛をかけられましたね?
その呪詛を解いたのは、我が夫の晴明様。
まだ、誰が、呪詛をかけたか、分かっていない、今、晴明様の地位を脅かすのは、危険では、ございませんか?」
「何だと?」
右大臣の顔が、怒りで、赤くなっていく。
「(浅はかな人ね…。)
地位が、低くなれば、生活お苦しくなります。
晴明様の後には、違う人が、その地位の就きます。
その方を差し置いて、晴明様が動くことも出来ません。
つまり、右大臣様をお助けするのは、もう、あたし達ではないと言う事です。」
「お主、わしを脅すのか?」
「脅しでは、ございません。
真実を言ったまでです。」
唇を噛み締める、右大臣。
「そろそろ、夕飯の支度がございますので、失礼します。」
珱姫は、牛車に乗って、帰った。
晴明邸に着くと、いつものように、式神達が、足を洗ってくれた。
そして、晴明の待つ部屋に行った。
珱姫は、後ろから、晴明を抱きしめた。
「ただ今、帰りました。
晴明様。」
「珱姫!!」
晴明は、珱姫を正面から、抱きしめ返した。
「晴明様…。」
珱姫は、そっと、抱きしめ返した。
「(不安にさせてごめんなさい…。)」
「珱姫、右大臣様に、何を言われたんや?」
「妻になれと…。」
「やっぱり…。
それで、何て言うたんや?」
「お断りしました。
そしたら、「晴明の地位を脅かす。」と申されたので、「右大臣様をお助けする事が、出来ません。」と申しました。
あたしのせいで、地位が落ちるかもしれません…。」
「かまへん。
珱姫おるだけでええ…。」
晴明は、珱姫を、再び、抱きしめた。
次の日ー。
博雅が、慌てて来た。
「晴明!!
珱姫!!
大変だ!!」
「どないしたんや。
そないに慌てて…。」
「宮中で、噂になっておるのだが、珱姫が、右大臣様からの申し出を断ったと…。
怒った、右大臣様が、晴明の地位を落とすと申しているらしい…。
本当のことなのか?」
晴明と珱姫は、顔を見合わせた。
博雅は、それを見て、悟った。
「その反応…。
本当の事なのだな…?」
「あぁ、せや。」
「嘘だろ…?」
「ほんまのことや。」
「どうするのだ?!
右大臣様は、本気だぞ?」
そこに、右大臣の遣いが来て、正式に右大臣に呼び出された、晴明。
晴明は、大人しく、右大臣の元に向かった。
そして、地位を落とされた。
晴明は、何も言わず、受け入れ、屋敷に帰った。
そんな、晴明を博雅は心配して、晴明の話しを聞こうとしていた。
「やっぱり、落とされてもうた…。」
「晴明…。
どするのだ?」
「大人しく、受け入れたで。
珱姫、蓄えはあるん?」
「はい。
右大臣様が、泣きつく頃までは、ございます。」
「泣きつくって…。」
「泣きついてくるのは、分かりきってる事です。
ご子息の件もございますし…。」
「あっ…。
そうか!
あれは、晴明が、片したのだったな。」
「そうです。
そして、未だに、呪詛をかけたものが、分かっていません。
晴明様に、泣きつくしかないんです。
それに気付くまでの事…。
こちらは、何もしなくていいんです。」
「なるほどな…。」
博雅は、宮中に戻った。
その博雅を捕まえたのは、右大臣だった。
「博雅。
晴明の所に行っていたそうだな。
どうだ?
晴明は。
苦しんでおったか?」
「蓄えを確認しておりましたが、苦しんでは、おりません。
珱姫と、更に、仲睦まじくなった感じが致しました。」
「なんと!!
苦しんでおらぬのか?!!」
「はい。
私の目には、そう見えました。」
「ぐっ…。
晴明め…!!
では、珱姫をわしに渡すつもりはないと感じたか…?」
「私が見る限りは…。」
「おのれ…!
晴明め…!」
夜、博雅は、もう一度、晴明の所に行った。
「晴明、右大臣様に捕まってな…、色々と言われたのだが、これからどうするのだ?
泣きつくのは、どれくらいかかるのだ?」
「まぁ、ひと月やろな…。
でも、僕が考えてるんは、もっと、早い。
すぐにでも慌てて来るやろ…。」
「何をするつもりだ?」
「この件で、僕は、明日から、吉備に行くつもりやねん。」
「吉備?!!」
「そうや。
あそこは、星が、綺麗に見えるから…。」
「吉備にk行くとなれば、帝がなんと申されるか…。」
「帝は、左大臣様の抱える、陰陽師に頼めばええだけ。
困るんは、右大臣様だけや。
僕の後釜は、僕の足元にも及ばへん。
帝が、頼ることはないやろ。
それに、この件は、帝の耳に入ってへんと思う。
入ってたら、右大臣様が、咎(とが)められてるわ。」
「なるほど…。」
「やはり、そんなことであったか…。」
「帝!!」
晴明も、博雅も、驚いた。
「何やら、右大臣の方が、騒がしくてなぁ…。
まぁ、右大臣には、いい仕置きになるであろう。
養生して参れ。」
「はい。」
晴明と珱姫は、吉備に行く準備をした。
「晴明、良い魚が、手に入ったんだ。
一緒に食べよう。」
「それは良いな。
珱姫、七輪と酒を…。」
「はい。
すぐに、準備させます。」
珱姫の式神が、準備していると、そこに、右大臣の娘である、さとこが、お供を連れて来た。
「珱姫。
珱姫は居るか?」
「あたしにございます。」
「そなたが、珱姫…。
昨日は、遠くからだったので、分からなんだ。
我が名は、さとこ。
右大臣の娘だ。
珱姫、これらは、父からの贈り物じゃ。
受け取るが良い。」
「お受け取り出来ません。」
珱姫は、即答し、にこりと微笑んだが、目は笑ってなかった。
それを聞き、さとこは、怒った。
「そなたっっ!!
贈り物の中身も見ずに、返すと申すのか?!
この中には、きらびやかな物が、沢山、入ってると言うのに…!!」
「はい。
あたしには、必要の無い物ばかりですので。」
さとこは、益々、怒った。
「そなたっ!!
父の思いが、分からぬのか?!!」
「あたしは、安倍 晴明様の妻です。
晴明様以外の殿方に、興味ありませんので、他の殿方からのご好意は、何も感じません。」
珱姫は、再び、にこりと微笑んだが、目は笑ってなかった。
さとこは、激怒!
「父がここまで、贈り物をするのは、珍しいのよ?!!」
「それでも、あたしは、何も思いません。
さとこは、怒り心頭。
「そなた!!!
何が、不満だと言うのだ?!!」
「不満は、ありません。
ただ、晴明様のことしか、頭に無いだけです。」
珱姫は、またまた、にこりと微笑んだ。
だが、めは、ずっと、笑ってない…。
さとこは、唇を噛んだ。
「全ての贈り物を持って、お帰り下さいっ!!」
「持って帰れる訳ないでしょ?!!
そなたの侍女にでもあげるわ!!」
「その必要は、ありません。。
彼女達は、皆、式神なので。」
珱姫は、術を解いた。
ただの紙に変わっていく、式神達。
ひらひらと舞いながら、その場に落ちていくのを見て、珱姫は言った。
「ご覧お通りにございます。
術が解けて仕舞えば、ただの紙。
そのようなものに、必要はありません。」
さとこは、再び、唇を噛み、贈り物を持って、帰った。
それを見て、珱姫は、式神達を戻した。
贈り物を突き返された、右大臣は、その品々を、他の妻達に与え、さとこには、口止めをした。
妻達は、突然の贈り物に、大喜び。
次の日
右大臣の遣いが二人来た。
「珱姫殿、右大臣様がお呼びだ。
我らと、参られよ。」
「(今度は、お呼び出し?!)
(晴明様にしか、興味ないって、言ったのに…。)」
珱姫は、不服な顔をして、ついて行くことに…。
気が気がじゃない、晴明。
牛車に乗り、右大臣の所へ行った。
「右大臣様、珱姫殿が、参られました。」
右大臣は、思いっきり、障子戸を開けた。
「珱姫、よくぞ参られた!!!
さぁ、入るが良い!!」
珱姫は、渋々、中に入った。
「珱姫、贈り物は、全て、気に入らなかったようだな?」
「(気にいる気に入らないの以前の問題…。)
…はい。」
「では、お主の気にいる物を、与えよう。
何が良い?
何でも良いぞ?」
「あたしが、欲しいのは、晴明様のお心…。
ただ、それだけにございます。」
「何と!!
そこまでして、晴明が良いか?!
晴明のどこがいいのだ?!!
晴明、晴明言いよって…。」
「晴明様は、あたしの夫であり、あたしは妻です。
この身も心も、晴明様のものにございます。
(あなたの入る隙はないの!!)
(何度言ったら、分かるのよ?)」
「我が妻になれば、家事などせずに済むぞ?」
「全ての、家事を一人でしている訳では、ございません。
式神達に、手伝ってもらっております。
それに、晴明様の身の回りのお世話をするのが、あたしの喜びにございます。」
「お主は、きらびやかな着物を着たいと思わぬのか?」
「きらびやかな着物は、動きにくくございます。
(吹き飛ばされたりするのよ?)
(邪魔なだけじゃない!!)
陰陽術の際に、邪魔です。」
「我が妻になれば、陰陽師もせずとも良いぞ。」
「(は?)
陰陽術の使えない、あたしなど、ただの人形…。
陰陽師だからこそ、あたしなのです。」
「何を言う!
お主は、何もせずとも、美しい。」
「(ただ、着飾った、あたしを置きたいだけ?)
(話すだけ無駄ね。)
美しい女子は、右大臣様の周りに、沢山、いらっしゃるでは、ないですか。」
「どうしても、我が妻にならぬと申すか?」
「はい。
(当然でしょ?)」
「ならば、晴明の地位を脅(おびや)かすと申してもか?」
「(今度は、脅し?)
それでも、あたしは、右大臣様の妻には、なりません。
右大臣様、これだけは、申し上げておきます。
先日、ご子息が、何者かに、呪詛をかけられましたね?
その呪詛を解いたのは、我が夫の晴明様。
まだ、誰が、呪詛をかけたか、分かっていない、今、晴明様の地位を脅かすのは、危険では、ございませんか?」
「何だと?」
右大臣の顔が、怒りで、赤くなっていく。
「(浅はかな人ね…。)
地位が、低くなれば、生活お苦しくなります。
晴明様の後には、違う人が、その地位の就きます。
その方を差し置いて、晴明様が動くことも出来ません。
つまり、右大臣様をお助けするのは、もう、あたし達ではないと言う事です。」
「お主、わしを脅すのか?」
「脅しでは、ございません。
真実を言ったまでです。」
唇を噛み締める、右大臣。
「そろそろ、夕飯の支度がございますので、失礼します。」
珱姫は、牛車に乗って、帰った。
晴明邸に着くと、いつものように、式神達が、足を洗ってくれた。
そして、晴明の待つ部屋に行った。
珱姫は、後ろから、晴明を抱きしめた。
「ただ今、帰りました。
晴明様。」
「珱姫!!」
晴明は、珱姫を正面から、抱きしめ返した。
「晴明様…。」
珱姫は、そっと、抱きしめ返した。
「(不安にさせてごめんなさい…。)」
「珱姫、右大臣様に、何を言われたんや?」
「妻になれと…。」
「やっぱり…。
それで、何て言うたんや?」
「お断りしました。
そしたら、「晴明の地位を脅かす。」と申されたので、「右大臣様をお助けする事が、出来ません。」と申しました。
あたしのせいで、地位が落ちるかもしれません…。」
「かまへん。
珱姫おるだけでええ…。」
晴明は、珱姫を、再び、抱きしめた。
次の日ー。
博雅が、慌てて来た。
「晴明!!
珱姫!!
大変だ!!」
「どないしたんや。
そないに慌てて…。」
「宮中で、噂になっておるのだが、珱姫が、右大臣様からの申し出を断ったと…。
怒った、右大臣様が、晴明の地位を落とすと申しているらしい…。
本当のことなのか?」
晴明と珱姫は、顔を見合わせた。
博雅は、それを見て、悟った。
「その反応…。
本当の事なのだな…?」
「あぁ、せや。」
「嘘だろ…?」
「ほんまのことや。」
「どうするのだ?!
右大臣様は、本気だぞ?」
そこに、右大臣の遣いが来て、正式に右大臣に呼び出された、晴明。
晴明は、大人しく、右大臣の元に向かった。
そして、地位を落とされた。
晴明は、何も言わず、受け入れ、屋敷に帰った。
そんな、晴明を博雅は心配して、晴明の話しを聞こうとしていた。
「やっぱり、落とされてもうた…。」
「晴明…。
どするのだ?」
「大人しく、受け入れたで。
珱姫、蓄えはあるん?」
「はい。
右大臣様が、泣きつく頃までは、ございます。」
「泣きつくって…。」
「泣きついてくるのは、分かりきってる事です。
ご子息の件もございますし…。」
「あっ…。
そうか!
あれは、晴明が、片したのだったな。」
「そうです。
そして、未だに、呪詛をかけたものが、分かっていません。
晴明様に、泣きつくしかないんです。
それに気付くまでの事…。
こちらは、何もしなくていいんです。」
「なるほどな…。」
博雅は、宮中に戻った。
その博雅を捕まえたのは、右大臣だった。
「博雅。
晴明の所に行っていたそうだな。
どうだ?
晴明は。
苦しんでおったか?」
「蓄えを確認しておりましたが、苦しんでは、おりません。
珱姫と、更に、仲睦まじくなった感じが致しました。」
「なんと!!
苦しんでおらぬのか?!!」
「はい。
私の目には、そう見えました。」
「ぐっ…。
晴明め…!!
では、珱姫をわしに渡すつもりはないと感じたか…?」
「私が見る限りは…。」
「おのれ…!
晴明め…!」
夜、博雅は、もう一度、晴明の所に行った。
「晴明、右大臣様に捕まってな…、色々と言われたのだが、これからどうするのだ?
泣きつくのは、どれくらいかかるのだ?」
「まぁ、ひと月やろな…。
でも、僕が考えてるんは、もっと、早い。
すぐにでも慌てて来るやろ…。」
「何をするつもりだ?」
「この件で、僕は、明日から、吉備に行くつもりやねん。」
「吉備?!!」
「そうや。
あそこは、星が、綺麗に見えるから…。」
「吉備にk行くとなれば、帝がなんと申されるか…。」
「帝は、左大臣様の抱える、陰陽師に頼めばええだけ。
困るんは、右大臣様だけや。
僕の後釜は、僕の足元にも及ばへん。
帝が、頼ることはないやろ。
それに、この件は、帝の耳に入ってへんと思う。
入ってたら、右大臣様が、咎(とが)められてるわ。」
「なるほど…。」
「やはり、そんなことであったか…。」
「帝!!」
晴明も、博雅も、驚いた。
「何やら、右大臣の方が、騒がしくてなぁ…。
まぁ、右大臣には、いい仕置きになるであろう。
養生して参れ。」
「はい。」
晴明と珱姫は、吉備に行く準備をした。



