「…安井さん」



「ん…」



「家の鍵、ありますか?」




部長の背中で寝てしまっていた私が次に目が覚めたのは、私の住むアパートの、自分の部屋の前だった。




「……!!
す、すみません…!
道案内もせず眠ってしまいました…!!」




間近にあった部長の微笑む顔を見たら、一気に目が覚めて。



すいません!と何度も頭を下げても、部長は『気にしないで』と笑うだけ。



……私ってば、情けない。



絶対重かっただろうし、恥ずかしかっただろう…。



きっと部長に嫌な思いをさせてしまった。絶対迷惑な女だと思われた…。




「…少し元気になったみたいで、安心しました」



「……!」



「会社で安井さんの住所は事前に確認してきてましたし、俺が勝手にお節介しただけですから。
謝られるようなことは何もありません」