大人になんて、ならないで。




たしかに、三好部長よりも明らかに年上の平社員もいるけど…



それは三好部長の努力で得た地位であって…



そんな、部長を陥れるようなこと…




「そんな子どもじみた嘘で部長を陥れるなんて…
同じ大人として、恥ずかしいです…」




すみません、と頭を下げたら、



部長が『え!!』と驚く声が聞こえた。




「安井さん、顔上げて?
安井さんは何も悪くないですし」



「でも…私、部長が社内で不快な思いをしていたこと…全然気付きませんでした」



「……安井さん」



「すみません…何も出来なくて…」




まだ頭を下げていると、



部長が優しく、私の頭を撫でた。




「え…あの、部長?」



「……安井さんの、そういうところ。
俺はずっと救われてるよ」




わしゃわしゃと髪を乱されて、思わず顔をあげる。



すると、三好部長が



びっくりするくらい、優しく…甘い微笑みを浮かべていた。