大人になんて、ならないで。





はぁ〜、と、電話の向こうで真矢くんが息を吐くのがわかった。




「なにか、用事だった?」




そう言ったら



今度はホッとしたようなため息が聞こえた。




「真矢くん?」



『何かあったのかと、思った…』



「え…」



『めぐちゃんの会社、残業なんてほとんどないじゃん。
だから…事故とかに巻き込まれたのかと…』



「そんなわけないよ。
今日はたまたま、突発的に休んじゃった人がいたから…」




真矢くんと話していたら、



電話口から、風の音が聞こえ出した。




「真矢くん、今、外?」



『うん。今出たとこ』



「出かけるところだった?
ごめんね、邪魔して」




『切るね』と言うと



『待って』と返ってきた。




『めぐちゃんの会社の前まで行くから』



「え……」



『着くまで、話し相手になって』