煩悩を打ち消していたらトントントントンとドアを叩く音が聞こえてきた。




「ごめん、朱里くん。怒った? おこらせちゃったよね?」



「怒ってるに決まってんだろ」


いや嘘だけどね。


「えぇ、でも……朱里くんが先にしたんじゃん」



ドア越しの反論はすごく弱弱しい。


可愛……。



恋々、覚えといて。



「そういうのは好きなやつにしか、やっちゃいけないんだよ」



だから俺は、恋々に……



「……そっかぁ。ごめん」



って。


すごくない?この鈍感力。