「じゃあ俺が一緒に住むってのはどうですか?」


……一緒に、一緒に……? え?



ぎょっとした。



家族全員おんなじように目をまんまるにして朱里くんを見ている。



「……朱里くんが一緒にって、いや年頃の男女が……それはだめだろう」



パパはせっかくの厚意を思いやるような笑顔で、弱々しく朱里くんに返した。



「そっか。おじさんは俺が恋々(ここ)に手を出すとか、そんなこと心配してるんだ……」



朱里くんは目に悲しそうな色を浮かべ、視線を床に落とす。




「俺、空手は黒帯だし恋々のこと純粋に守れるかなって思って言ったのに、そんなこと……。だけどそうだよね……俺なんかと一緒に住むなんて心配だよね」



ああ、いつもの朱里くんだなぁ。って、そう思った。



朱里くんはあたしの両親、というか大人全般に対して、ぶりっこ……いや、ヨイコという仮面を被って生きていた。



朱里くんが15年かけて築き上げてきたヨイコというイメージと信頼と……それからあの仔犬のような目がよく効いたのかもしれない。