「……ありがとう、朱里くん」



夕方になって、まるでちょっと家に寄っただけみたいな口調の「おじゃましました」って声で、朱里くんは家に帰っていった。



あたしも朱里くんもバイバイって笑ったけど。


あたしだけはやっぱり涙の別れになっちゃうよ。


涙があふれて止まんなくて、部屋に駆け込んだ。



枕に顔を突っ伏して泣いていると、布団の隅でかさりと何かに触れた。



それは一枚の紙きれ。




「……なにこれ?」



涙を拭って起き上がる。


文字を見た途端、胸がじわっと熱くなった。


ドキドキと心臓が鳴り始めて、別の意味で新しく涙が流れる。



「……朱里くんの、ばか」





【離れた日に読む手紙】