叫ぶ勢いのまま、朱里くんをはじきとばした。


壁にぶつかる鈍い音が続く。


「……いってぇ」



そう呟いて隣にごろんと横たわった朱里くんは壁を向いてしまった。



「ごめん……」


でもあんなのって、ふいうちすぎるよ……!


ドキドキして心臓が壊れそうだった……。


あれ?でも。

「……しゃっくり止まった」


「そりゃよかったな」


背中から聞こえるふてくされたような声。


「……朱里くんの女たらし」



つい零れてしまった本音と同時に切なくなる。



「だから好きな子以外にべたべたしないって言ってんじゃん」



何度聞いても説得力ない。



あたしにこんなにべたべたしてくる癖に。



拗ねて尖り始めた唇を戻して、朱里くんの背中を眺める。



あたしはね。
朱里くんが好きだから、くっつきたいよ。



背中に手を伸ばす。

ぺたりと貼り付けてみたけど、朱里くんは何も言わない。


じゃあ、もっと。


そう思って、大きな背中にコアラみたいにくっついた。