そういってあたしにもう一度コートをかける優しい手。 この手に、恋愛の意味だけを求めたあたしが馬鹿だった。 朱里くんを独り占めしたくなったあたしは、本当に馬鹿だった。 「あたしはコートなくて平気だから。朱里くんが着て」 「……こういうのも嫌なの?それとも遠慮?」 「これは……遠慮」 「だったら、着てほしいから着て」 あたしより朱里くんの方が寒さに震えてるのに……。 でも被せられたコートには素直に腕を通した。 「……ありがとう」