【完】君に惚れた僕の負け。

ザザン……――。


ちょっといいかって言われてついていってみれば、その先は夜の砂浜だった。


ほかの生徒もぽつぽつといるようだけど、お昼に見た綺麗なブルーはどこにもなくて、真っ黒の海はけっこう怖い。


ホテルからの光だけを頼りに、優紀くんとならんで砂浜を歩いている。


スニーカーの中……砂だらけだな。



「俺ね……棚池さんと去年の夏休み補習が一緒だったんだけど覚えてない?」


「……え?」


大急ぎで記憶を巻き戻してみるけど、どうしても思い出せない。


あの時のあたしは本当に進級が危うくて、周りなんて気にする余裕がなかったの……。


「ごめん、わからなかった……」


「そうだよね……はは」



どうしよう……。
気まずい空気が一気にこの辺一帯を包んでいく。


その時、波の音に混ざってポケットの中でスマホが震えた。


朱里くんかも……!って思った一瞬で心拍数があがる。

いや、違うかもだけど。



……はぁ、朱里くんに会いたい。