「は……恥ずかしい……」



両手で顔を覆う恋々。


「……黙って」


まじで何も言うな。



顔がばかみたいに熱いし、心臓は暴れ放題。



花火の音も光も何もかも、目にも耳にも頭にも入らない。


「……できたよ」



平気を装って言ったけど、俺もうそっち見れない。




「ありがと……朱里くん」



さっきまで顔を覆っていた両手を恥ずかしそうに開いて、視線を逸らす。



俺達の視線は花火でもなんでもないところをうろうろして、ばちっと合っては、またうろうろ。



――バーン。



頭上で大輪の花が咲いた後。


白い煙がのんびりと風にながされて、うすい雲から月が顔を出した。



「お月見だ……」


満月を見てすぐに連想するのが月見かよ。

どーせ頭ん中今、団子だろ。



そんな恋々がなんとも愛しくてたまんなくて。



「……はぐれると悪い」



人もまばらな会場の片隅で、そんなばればれの嘘をついて。



俺は、恋々の片手を握った。



「こんなとこじゃ絶対はぐれないよ……」



言わなくていい返しをしっかりしてから。



恋々の小さな手はぎゅっと、俺の手を握り返した。






13.ふたり並んで見上げる夜空
(月が綺麗ですね)