【完】君に惚れた僕の負け。

――バシン。


頬を潰していた俺の片手を叩き落とした恋々が、悔しそうな上目遣いで睨んでいる。


「だからなんで海はダメなの?」



好きだから。


独り占めしたいから。


そんな布切れだけの恋々をほかのやつに見られたら気が狂いそうだから。




「世界のため。恋々の水着をみた全員の目に毒じゃん」



眼科大繁盛、って続けたらめちゃくちゃ睨まれた。



「……っ!ひどすぎ、朱里くんの意地悪!」



怒りすぎて半泣きって、なにそれ。


めちゃくちゃ可愛いじゃん。

でもまじ泣きさせたら、後味悪いからね。


リップサービスしとく。


「恋々は、浴衣の方が似合うよ」



ポンっと肩を叩くと、「え?」と嬉しそうな笑顔が咲く。



「早く帰ろ。俺に浴衣姿見せて」



「え……うん」


はにかむ笑顔。

ばかみたいに単純すぎてちょっと引く。



でもそういうとこが好き。とかいって。



「……かわい」



誰にも聞こえない声で呟いた。