拗ねていようがいまいが関係ない。
何も買わずに売り場を出た。
「なんで海ナシなの……?」
さっきからがっくりした声がしつこいな。
「そもそもなんで海に行きたいんだよ?」
「暑いから!夏だから!」
「安直だな。でもそれって、プールでもできるよね?」
「え、うん、できる」
じゃあプールに行こう!と提案しようとしているその輝く目を見て瞬時に俺は言うよ。
「ベランダにゴムプールでも張って入っとけ」
「……!」
「恋々にはそれで十分だろ?水張りくらい手伝ってやるよ」
「……そんなのプールっていわないし!むかつくーっ」
「あー?今なんつった?」
「海に行こうよ……!」
ぷくっと膨らませた頬。それをぶちゅーっとつぶしながら、距離を詰めた。
「……ぜったい行かせない」



