「そういうときは、基本的に恋々を優先したいって俺は思ってるから」



呆れっぽい大人びた表情。


そういって朱里くんはすれ違いざまに、ポンとあたしの頭の上にビニール袋を置いた。



頭上でがしっと受け取ったあたしは、先を歩いていく朱里くんの後ろに慌ててついていく。



だけど、朱里くんは、そこで立ち止まった。


「……お前もっと俺のこと独り占めしていいよ」



そういって振り返った朱里くんは、ごめんねって言いたげな切なそうな表情。




ドキンっと心臓が跳ねて、思わず声を飲み込んだ。



「それお土産。慌てて買ったんだけど、走りすぎて割れた」


「え?」



ビニール袋をあけて中身を覗くと、ピンク色の林檎飴が入ってた。



バタンと、あたしの目の前でわざとドアを閉じる意地悪な背中。




だけど、あったかくて仕方ない……。



「ありがとう……!」



ドアを開けて、あのおっきな背中に飛びつきたくなった。



でも、できなかった。



ドキドキ。心臓が痛いほど、動いてる。







11.ドタキャンするひと人間失格
(されるたびに俺のこと呼べばいい話)