「……おい?」



「なに?」



「なんか言いたいことないの?」



「なにを?」



「ここまで言ってわかんねーの?」




なんでかわかんないけど、朱里くんの目は呆れでいっぱい。



「わかんないって、なにが……?」




そんなに遠い目して、どうしたの朱里くん?




「その鈍感さは医者にかかるべき。お前まじで大急ぎで病院行け」




ぽかっと頭に手が落ちてきた。



「いたー。もう、なんで叩くの」



眉根を寄せて、見上げると朱里くんは最高の呆れ笑い。



「まぁ……いいけどね、いまさら」




ふっとあたしを見て笑った顔が、あんまりに大人っぽくてびっくりした。



ドキドキ、心臓が動く。



それと同時に心臓のもっと奥がキュッと痛い。



……朱里くんの好きな子って、どこのだれなんだろう。



やっぱり、ちょっとだけ寂しいよ。






10.風邪は移らない
(キスをしなければの話)