「俺に好きなひとがいるとなんで寂しいのか、具体的に言ってみてよ」



それはほとんど諦めているような投げやりな朱里くんの声。



「だって、あたしには好きな人なんていないのに朱里くんにいるのは、さみしいでしょ?」



生まれてからずっと一緒だったのに。



手つないで隣を歩いてきたのに。



朱里くんだけ、元カノとか、どんどん先にいっちゃうとか。



そんなの寂しいに決まってるじゃん。




「置いていかれるのって寂しいもん」



あたしの頬にほんの少し溜まっていた空気を朱里くんがつぶした。



「……じゃあ、早く追いついてください」



呆れっぽくて意地悪な嫌味なのに、朱里くんの表情だけは優しくて。



ちょっとだけ、どきっとした。






9.幼馴染の独占欲
(早く俺に縛りつけたいんですけど)