【完】君に惚れた僕の負け。


こもった空気、蒸し暑い湿度。



だからってわけじゃない、あたしの体がどんどん熱くなっていくのは、朱里くんが……。



ーー壁をドンしているから。



ああ、近い。前髪と前髪がくっつきそうなほど。



「……っ、なに、朱里く」



「お前やっぱ留年しろよ?」



「なに……いきなり……」



戸惑って、わけわかんなくて、ひたすらに目があちこち泳いで。




結局たどり着いたのは、朱里くんの切なそうな顔で……。




「……なんで俺の目の届く範囲にいないの」




切なそうな声が、鼓膜を震わせた。