【完】君に惚れた僕の負け。

そんな彼は、ふうちゃんに詰め寄る。



「先輩、舟状骨(しゅうじょうこつ)って知ってます?」



未だ痛みに腕をぶんぶん振っているふうちゃんに、冷ややかに問う。


「しゅう?いや、知らない」



基本的にひとのいいふうちゃんは、素直に答えた。




「折れるとすげー厄介で治りにくくて、っていう骨なんですけどね。この辺の」



と言って、ふうちゃんの手の付け根を指さした。


一同、身を乗り出してそこに注目する。



へー。ここかぁ。



「うん?」



怪訝そうに眉根を寄せたふうちゃんは首を傾げた。



「次、恋々に触ったら、ここを瓦割りの要領でいきます」



静かな声は、廊下の空気を穏やかに震わす。




なのにその目だけは今、世界の誰よりも怖い。



誰もが言葉を飲み込んだから「こっわーい!」とか言ってみようと息を吸った時。


「恋々」



あたしの背中に手を回した朱里くんが、そのままあたしを押しながら歩きはじめた。



「え?え?」



戸惑いながらもあたしは朱里くんに連れ去れて。たどり着いたのは空き教室。