そっとしまおうとしたら。



リビングにタオルをひっかけた濡れ髪の朱里くんが来て。



手元を隠す間もなく、あたしの後ろに立って、身をかがめる。



「”BABY”、だって」


……っ、わざわざ言わなくていいから!



組み合わさったマグカップを右と左に離した。



「引き離さないでよ?」



後ろから腕が伸びて、かちゃっと取っ手が重なる。



「……これでいい」



満足そうに眺める朱里くん。


「これ……もしかして使う?」



「当たり前じゃん。俺、これ見てればどんなに悲しいことがあっても笑顔になれそうだから」