「じゃあなんで道なんか聞いてくんの?」
「それは……朱里くんが」
「俺が?」
「か、……かっこいいから、喋りたいって思ったんじゃないの?」
「聞こえない。なんて?」
「だ、だから!朱里くんがかっこいいから」
「え?もっかい言って?」
「朱里くんがかっこいいからでしょう!」
大声で叫んだら、周りの注目を一気に集めてしまった。
頬に血が大集合。
俯くあたしの耳に「……プ」という笑い声は確かに聞こえた。
「俺のことかっこいいって思ってくれてんの?ありがとう」
穏やかな陽だまりのような優しい声。
「う、うん。どういたしまして」
「恋々も、世界一可愛いよ」
「えぇ!? せせ世界一!?」
喜びを隠せない緩んだ顔をあげた。後悔した。
だって朱里くんは片側の口角をあげた、あの意地悪の塊のような顔をしていたから。
「……すげー嬉しそうな顔してんなぁ?」



