寄生虫学者の宍戸玲奈(ししどれいな)は、裏路地の遺体を観察する。玲奈にたまに協力を依頼する村田刑事が言った。

「今回も、本田くんの時と同じか……」

「殺人としか思えない。なのに、なぜ未だに捜査されないのか不思議だ」

「仕方がないだろ。死因がわからないんだ。これでは殺人なのかはっきりしない。死因が不明の殺人事件なんてないだろ」

村田刑事の言葉を聞きながら、玲奈は運ばれていく死体を見つめる。その口が、小さく何かを呟いた。



玲奈の助手として研究所に住み込みで働いている浜田透(はまだとおる)は、先ほどからため息をつきたくてたまらなかった。

透は今、リビングの掃除をしている。テーブルの上は玲奈の持ち込んだ医学書で散らかっていて、床にも荷物などが置かれている。

ほうきを手に掃除を透は続けるが、散らかした本人である玲奈は椅子に座って看護師であり助手の一人である飯野美咲(いいのみさき)となぜかしりとりをしていた。