「それより体は大丈夫?!」


「ぜんっぜん!!絶好調!!
あ、でもあたし、あなたの服にゲロ吐いたよね…
ほんっとゴメン!!
お酒は好きなんだけど、弱くてよく記憶なくしてるの!!」


パンっと両手を合わせて、申し訳なさそうに頭を下げる。


笑ったり、困ったり、悲しんだり、表情のコロコロと変わる子だ。
小さい子供の、おもちゃ箱みたい。




「全然大丈夫だよ。
お水でも飲みなよ」


「あ!ありがとうございますっ!」


ペットボトルの水をコップに注いであげたら、琴子は一気にそれを飲み干した。
よっぽど喉が渇いていたのだろうか。
ぷはっ~っとおじさんのような声を出した琴子のくるくるの金髪に琴音はじゃれついている。


そのさまを見ていたら
思わず吹き出してしまった。


「ふっ!!」


「な~に笑ってんの~?
てゆーか痛いよぉ!!髪の毛で遊ばないでよ~!!
あ、水もう一杯もらいま~すっ!!」


そう言ってコップに水を注ぎながら、何やら琴音に話を掛けている。



俺にはちょっとした衝撃だった。



猫は元々警戒心の強い生き物だし、子猫の時から人間との関わりが俺しかないのなら、なおさら
けれど目の前にいる琴音は、彼女によく懐いているように見えるし
少しだけ飼い主の立場はナシ。
しかも特別猫好きではなかったようだし、そう考えれば人間同士にも相性があるように猫にも相性があるのだろうか。