「今、タクシー拾うから。
家言える?」


「…家は、無い」


ふわりと体が舞い上がり
まんまるの月がくるりと回っているかのように見えた。
身長150センチからじゃあ決して見えない世界。
ふわっと柔軟剤の香り、それは自分とは違う香りで
肩越しから見えた、彼の襟足はやっぱり汗をかいていて
驚いたのと同時に、わたしはハルにお姫様抱っこをされていた。



?!?!?!?!?!?!?!?!!?



なんて居心地の良い世界。
すっぽりとわたしを包み込む大きな体。
仕事で沢山の男と触れ合ってきているのに
裸の付き合いをしてきているのに
どこかで人の温もりに飢えていた自分に気づく。



あぁ、猫になりたい。
飼い主は優しい人がいい。
優しい飼い主の胸の中で、安心して眠れたのなら
それほどの幸せは、無い。
柔らかい温もりの中で、ふっと意識を手放していくのが分かった。



もうこのまま、目が覚めぬならそれでも良い。
でも目が覚めるのであれば、優しい現実ばかりが待っていてくれますように………
願うだけじゃ、願いは叶えられない。