死にたい。
そう思った瞬間、慌てて立ち上がったハルはわたしを支えた。
ハルの手から服まで、ゲロまみれ。
けれどぼんやりとした意識の中で、ハルは嫌な顔一つせずに「大丈夫?!」とわたしへ声を掛ける。




なんて良い奴。



「琴子さん!ごめん!
俺が突然走り出したからだよね?!
ねぇ大丈夫?!病院行く?!」



’琴子さん’
少しだけ話をしただけなのに…名前を覚えてくれている。
さっきのムカつく男は、わたしの名前さえ覚えていやしなかった。



ごめんよ、ルックスだけで苦手なタイプなんて判断してしまって……。



「うぅ、気持ち 悪ぃ……」


「俺、送っていくよ!家近い?!」


あぁ…家…。
家どうしよう。
早く決めないと。
こんな時に何を考えているんだか…。



いつまでもユカリに厄介になるわけにはいかない。
だから最近は一生懸命仕事をして、ホストにも行かずにブランド物も買ってない。
次の住居を探すまでは、我慢するんだ。
だらしない自分を、いい加減卒業しないと…。
でも家…保証人どうしよう。まともな所は保証人が必要。けれど家出同然で出てきた訳で親にも頼れないし、リップスの店長保証人になってくれるだろうか。
いや、今はそんな事を考えている場合ではない。