だから君には敵わないというのだ。




君はいつだって俺の一歩先を歩いて、振り返った笑顔の美しい事。
いつだってこっちが先に言いたい事、言い出してしまうのだから。
ごく自然に
それは本当に自然に
まるで空に雲が連なって浮かぶような
川に水が自然に流れるような
そんな風景と溶け込むようにいつだって隣にその笑顔があった事。





「俺も、琴子が好きです」



琴子はぽかんと口を開けて、それは正にアホ面と呼ぶのにふさわしくて
俺の肩でゴロゴロと喉を鳴らす琴子と自分を交互に指をさして、不思議そうに顔を傾げた。



「琴子?琴音?」


「いや、だから琴子が好きだって。
そりゃ琴音も好きだけども」


「ハルが、あたしを好き?
それって恋愛感情の好きって事?
あたしが言うとるのはお兄ちゃんみたいな好きやなくて人間的に好きとかそういうんやなくて
ハルを男として好きやって言うとるんよ?」



どこまで鈍感なのだか
先が思いやられる。
それはまぁ、俺にも言える事か。

こんなに近くにいて、ずっと一緒にいたのにお互いの気持ちに気づかずに遠回りばかり。
だけど遠回りしたからこそ、どれだけ大切な人だって気づく事も出来た。