【完】ボクと風俗嬢と琴の音


「まぁデートつぅか、気晴らし?みたいな。
俺の」


あんたのかよッ。


「別に行ってもいいけどさぁ」


「どーせ暇してて寝ようとしてたところなんだろ。
適当に用意してれよ、30分で着くわ」





それだけ言い残して、電話はガチャ切りされた。
なんつー自分勝手な男だ。
相変わらずと言えば相変わらずなのだけども。

確かにわたしは暇を持て余していた。
でもそれは休日を有意義に過ごしている、という事でもあった。

毎日毎日長時間労働をこなして、週に2回ある休みは最高だって気づいた。
その休みに家でゴロゴロと過ごす事は至福の時間なのである。

けれど相変わらず強引なこの男は、30分で迎えに来ると言ってきやがった。
買い物もスッピンで行った。これから化粧をする気力はない。
まぁ大輝だからスッピンでも許されるだろう。今更だ。


自分勝手で強引な男ではあったが、この3か月は一度も会っていない。
それでもメールや電話で連絡は頻繁にくれていた。
新しい仕事はどうだ?とか、新しい家の住み心地はどうだ?とか。それは些細な話ばかりだったけれど、不器用なこの男なりの気遣いが見え隠れしたから、わたしはやっぱりこいつを嫌いにはなれない。



根本は、優しい人間なのだと思う。
そんな大輝の分かりずらい優しさを理解してくれる女性は、きっとこの世の中のどこかにいる。
それはわたしであってはいけないのだ。
この世界中の中で、大輝を幸せにしてくれる女性は必ずいる。