【完】ボクと風俗嬢と琴の音


それからも重いスーパーの袋を両手に持って、街をブラブラした。
秋の空気は綺麗。パーカー1枚でも歩ける最高の季節。
まだ咲いていた花花たちを見つめて、小鳥の囀りを聞いて
河川敷を横切りながら、ゆっくりと歩いた。
自分の目で見た物、感じた事を誰かに伝えたくなる。  そんな感情昔なら持った事なかったはずなんだけど。



ゆっくりと過ぎていく季節の美しさを立ち止まり見つめる事なんてなかった。



家に着いたらもう12時を回っていて
スーパーの袋をおいたらどっと疲れが出た。



「お腹空いたと~…」


独り言のように呟いて。

冷蔵庫残り物炒飯を作り
干してあった布団を取り出す。
ふわっふわ、抱きしめたら日向の柔らかい匂いが鼻の奥まで通り過ぎて行った。


お腹もいっぱい。
お昼寝幸せ。
干されたばかりの布団を抱きしめて、目を閉じようとした、瞬間、だった。



けたたましく電話の着信音が部屋に響いた。
マナーモードにしておけば良かったと酷く後悔した。


お日様の匂いがする布団を両手でぎゅうっと握りしめて、無視しようかとも思ったけれども
その着信はしつこく何度も何度も鳴り響いた。
1回止まったかと思えば、堰を切ったかのように再び長い着信音が鳴り響く。
これは出るまで、止まらせる気はないようだ。