【完】ボクと風俗嬢と琴の音



テレビをつけたら、大好きだったはずのお笑い番組がやっていた。
クッションをお腹に抱えてそれを見ても、何一つ笑えない。
あんなに大好きだったのに…。

ゲームをしても、ひとりじゃ何も楽しくなくて
小説を読んで面白い箇所があっても、それを教える人は目の前にいない。
冷蔵庫にあった有り合わせの物で作ったうどんも、何故か味気ない。
これでも料理は人並みにはなったはずなのに、どうしてこんなに味気がないのだろうか。
ハルの作る物は味付けは薄かったけれど、どれもこれも優しい味がして、わたしはハルの作る料理が大好きだった。



まるで色を失った世界。
ハルと一緒ならば、何気ない風景だってカラフルに色付けされた。
けれど、今はモノクロームで、悲しみは1日1日忘れていくものではなく、募っていくばかり。




「はぁ~…明日は休みだから昼まで寝よう。
あ、でも天気予報晴れやん。
布団干そう…」



そんなところまで、ハルと一緒に過ごした生活が滲みついていた。
でも忘れなきゃいけないんだ。早く、早く、何か楽しい事を見つけて、そうしたらきっと忘れられる。
明日は早起きをしよう。
休みだけど、早起きをしよう。
そうしたらこんな憂鬱な気持ちも吹っ飛んでいってしまうはずだ。
そして太陽の光りをたっぷりと浴びた布団でお昼寝をしよう。
ふかふかなその布団に寝れば、柔軟剤の匂いがする可愛いあの子を思い出して、きっと幸せな気持ちになれるはず。