「優弥?!」


「なんだよ、そんなに慌てて
今夕ご飯食ってんだけど、ユカリちゃん手作りハンバーグおいち~」


「ユカリさんいる?!」


「いるけどもよ、なんなん?どうしたマジで落ち着け」



電話じゃきっと足りない。
きっと伝えきれない気持ち。
きちんと目を見て、相手の顔を見て話したいんだ。
俺はどう思っていて、君をどれだけ大切に想って、必要としていたかを



「ユカリさんに代わって!
琴子の家、教えて欲しいんだ!」


ねぇ、まだ一緒に見ていない風景が沢山ある。

だから会いに行くよ。
今度は俺から、君に会いに行くよ。
君がどんなに会いたくないって言ったとしても、今、会いたいんだ。


ユカリさんに琴子の住所を聞いて、それをメモに取って慌てて家を出ようとすると
不安そうに琴音は俺の足にすり寄ってきて、こちらを見上げた。

その場にしゃがみこんで、琴音に言い聞かせるように頭を撫でた。



「にゃ~ん」


少し鳴いた後
琴音は耳をピクピクと何度か動かして、大きな目を真っ黒に見開いて
慌てて玄関まで走って行った。



会いに行くよ。
伝えに行くよ。
世界中の誰よりも君が大切だって
出会えてどれだけの幸せをくれて
俺の知らなかった俺を見つけてくれたって
そして
君がこんなにも好きだって
あの日伝えられなかった言葉を、届けに行くよ。