【完】ボクと風俗嬢と琴の音


全ての世界が色を失ってしまったように、色褪せて見えた。
ぽっかりと空いた、空虚感が襲ってくる。


この家は何も変わっていない。
琴子がいなくなった以外。
それでも大切なものがすっかりと無くなってしまったと言わんばかりに冷たい風だけが通り過ぎていく。



「仕事でもしよう」


何もする事がない時は仕事に逃げるに限る。
会社用のパソコンを鞄から取り出したら、それと同時に床に先ほど木村さんから貰った名刺がひらひらと落ちて行った。



’確かアンタと同郷だって言ってたぞ?’

’すげぇ美人’


先ほどの木村さんの言葉が脳裏をかすめた。
暫くの間フリーズして、その名刺の名前に釘付けになった。



会社名の下に
「坂口 琴音」
と名前が書いてあった。