21.晴人「僕と琴子と琴の音」








暑い。
暑いったら、暑い。
とにかく暑いったら、それ以上言う事はない。



「にゃぁ~ん」


暑いんじゃボケェ、とでも言うように俺の顔の上に乗っかって琴音は鳴いた。
まだ寝ぼけたままの頭で、枕の横にあるリモコンを取って、冷房の温度を下げる。
機械音が音もない部屋に響いて、冷房の風が肩越しに通り過ぎていく。
9月も終わるというのに、何故にこんなに暑いんだか。


重い腰を上げてベッドから起き上がると、琴音は嬉しそうに目を瞬かせた。
にゃ、にゃ、小さい鳴き声を何度も復唱し、足の周りを右へ左へと忙しなく動く。
携帯のアラームが鳴って、それを止めてからリビングへと向かう。


琴音は真っ先にリビングに隣接するキッチンの棚の前に立って、にゃーんとさっきよりも長く鳴く。




「朝ごはんちょーだい」って言っているらしい。


「お前、ちょっとデブになった?」


小さかった琴音。
拾った頃は両手で収まるほど小さかったのに随分大きくなったものだ。
ことあるごとにチュールをねだってきて、それを与えているうちに瞬く間にデブ猫になった気がする。