「琴音ーーーーー」


「わたしねーーーー」


「琴音の事が大好き」


そんな独り言を言っても、琴音には伝わらない。
ただただ必死に、わたしの手のひらに自分の顔を押し付けるのだ。


「でもねーーー」


「ハルの事も同じくらい好きーーーー」


「伝えといてくれる?」




隣に寝転び、琴音に問いかけた。
そしたら琴音は冷たい舌先でわたしの頬を舐めた。
何度も何度も舐めた。それはしつこいくらい、何度も
自分の目から涙が出ていると気づいたのは、いつからだったのだろうか。
琴音、出会った頃もこうやってわたしの涙を拭ってくれた。



家を出ていく時も玄関までついてきてくれて、ちょこんと座ってわたしを見上げる。
いつも通り。
パタン、と扉をしめたら途端にさっきまで泣いていたはずなのに、再び涙がこみあげてきた。
止めようとして何度拭ってもその涙は止められずに、溢れて溢れて
このまま、涙を流しすぎてしまって死んでしまうんじゃないかってくらい
涙は止まらなかった。