【完】ボクと風俗嬢と琴の音



帰り道。
家まで送って行こうとしたらそれは断られた。
月が綺麗な夜だった。自分が情けなくなるほど、綺麗な夜だったんだ。


帰り際、彼女は言った。



「フェアじゃないわ」


「え?」


「わたしは自分の気持ちをちゃんと伝えた。
本当は負け戦確定の勝負はしない主義のわたしが、きちんと勝負して敗けた。
それならばあなただって勝負するべき」


「それは――――」


「いくじなし。
晴人くんはとっても優しい人だと思うけど、いくじなしよ。
相手を困らせるなんて、自分に自信がない言い訳だわ」



彼女は最後まで、潔い人だった。
その言葉が胸をえぐるように深く深い場所まで突き刺さっていった。


俺は、いくじなし。
その通りだ。
山岡さんの言う通りなのだ。


そう考えれば今までの人生って全部そうだった気がする。
琴音先輩の件に関してもそうだ。
何で振られたのに、あっさりとそれを受け入れた?好きだったのに、納得がいかなかったのならば、分かり合えるまで話し合いをすべきだったんじゃないか?
相手の出した結論だからって、それを受け入れる振りをして、暫く引きずった。それはやっぱり俺にいくじがなかったからで、別れるのが本当に嫌だったのであれば、泣いても喚いても自分の中にあった感情を彼女へ伝えるべきだったのではないのか?

離れていく人の心を知って、仕方がない、なんて理由ばかり探していた。
そうしなければいけなかった理由。
こうなってしまった理由。
理由をつけて、そういう時はいつだって諦めた。