【完】ボクと風俗嬢と琴の音



「そう言われると思ってた…。
かなり往生際の悪い女だと思ったでしょ?
でもそれくらい、晴人くんの事が好きだったんだから…」


「本当にごめん
ごめんなさい…」



項垂れて、下げた頭が上がらない。
初めから、こんな事始めるべきではなかったのだ。
それなのにずるずるとこんな関係続けて来て、余計に山岡さんを傷つけてしまっている。
自分の気持ちを意識しながらも、それを認める事が出来ずに、もしかしたら山岡さんを好きになれるかもなんて、邪な事を考えた結果がこれだ。
自分の気持ちに気づいた時点で、はっきりと彼女に告げるべきだった。



「頭上げてよ、なんかわたしが悪い事してるみたいじゃないの」


顔を上げたら、山岡さんは泣いてはいなかった。
さっきまで涙が零れ落ちそうだったのに、いつもの笑顔を作って
そしてビールグラスをぐいっと飲み干した。


「別に1回の失恋くらいでくよくよしてばっかの女じゃないわよ。
何て言っても、わたしは山岡美麗。
わたしと付き合いたい男なんてこの世で星の数ほどいるわ。わたしが振られて世の男たちはばんばんざいな訳?
分かる?
そんなわたしには、超エリートで、お金持ちで、誰もが羨むイケメンと付き合う未来しか見えていないんだから。
あァ~振られて良かったァ~
晴人くんなんてどーせ出世も出来ずに平社員止まりだっただろうしぃ~」


「それは…酷いよ…
確かに俺は出世出来なそうだけどさ…」


「アハハ~いつかこんな完璧なわたしを振った事を後悔するがいい」



悪魔みたいな笑顔を作った山岡さんは、俺の気持ちを軽くしようとわざとそんな事ばかり口にしている。
痛い程伝わってるよ。だってあなたはとても優しい人だから。強さはいつだって優しさの中にあるのだから。
俺を悪者にしないように、自分が悪者になるのに徹してる。それが出来る人は本当の強さと優しさを持っている人だけだ。
きっとこの先もこんな素敵な人に好きになってもらえる幸福は、自分の人生で見つけられそうにない。