「北海道はとっても良いところだよ。いつか帰りたい」
「えぇ?そうなの?」
「うん。異動願いを出すなら北海道支社かなぁって思ってる。
出世するなら、いつかは本社に戻った方がいいって言われてるけどあんまり今は考えていないかなぁ~…
やっぱり満員電車に揺られながら生きてくのって苦手だしさ」
「いいなぁ~、北海道
函館で海鮮食べて、札幌の時計台を見て、宗谷岬に行って、旭山動物園で動物を見るの」
「ハハ、山岡さんそれ1日じゃ絶対見て回れないから」
「そうなの?」
「これだから北海道の広さを知らない人は」
そう言って、ふたり顔を見合わせて笑った。
なんて幸せな時間だっただろう。
始めの頃は緊張しっぱなしでロクに話も出来なかったけど、今は普通に笑って会話なんて出来る。
そして、グラスビール越しに見る彼女は、今日も綺麗で
それでも違う、と思った。
彼女ではない、と。
俺は好きなんだよ。
スッピンで眼鏡で、缶ビールを持って笑って
あぐらをかいて、時折ベランダに行って煙草なんて吸っちゃって
はたから見れば女らしさの欠片もない、あの子しか見えないんだ。



